いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ガラッパの謎 引きこもり作家のミステリ取材ファイル」久真瀬敏也(宝島社文庫)

「引きこもり」作家として活躍する石田水瀬と幼馴染みの徳川大樹。「隠れキリシタン」の新説に挑むため、「引きこもり」なのに、なんとか取材にやってきたが、調査は思わぬ方向へと広がっていく。キリシタン大名、河童の一種「ヨッカブイ」、さらには「妖怪」「ユダヤ教」「一向宗」……。「河童の手」、山に入り山童となる河童。次から次に繋がっていく謎。彼らは歴史の常識を覆る新説に辿り着けるのか。


鹿児島にも隠れキリシタンがいた!? 隠れキリシタンの秘密を追って、大学生二人と片方の幼馴染の作家が九州を駆けずり回る。

「引きこもり作家のミステリ取材ファイル」なのに安楽椅子探偵じゃないのか(困惑)。というか普通にフィールドワークに行ってるし。
ミステリではなく蘊蓄小説に近い。いや、小説と言っていいものかどうか。
とにかく説明文が多くて、小説を読んでいるというよりは、論文を書くための覚書や草稿を読んでいるような気分になる。そこに学生のフィールドワーク日記がおまけで付いている、くらいの感覚。
江戸時代のキリスト教や九州の歴史に興味がある人でないと、読むのがしんどくなるところが多いと思う。ちなみに、歴史はそれより前の時代が好きで、宗教絡みは全く興味なしの私は中盤から後半がかなりしんどかった(二度寝落ちしました)。妖怪好きなので河童が出て来るところは興味を持って読めたのだけど。
それでも、小さな欠片のような情報や一見関係なさそうな情報から、可能性を見出して一つの線に繋げていく思考の経過をなぞっていくのは面白く、歴史学における新発見というのは、こういうことの積み重ねで生まれるだろうと想像を膨らませられたので、題材が合えばもう少し楽しく読めたのかな。