いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「現実でラブコメできないとだれが決めた?」初鹿野創(ガガガ文庫)

「ラブコメのような体験をしてみたい」ラノベを嗜むラブコメ好きは皆、一度はこう思ったことがあるだろう。ヒロインたちとイチャラブしたり、最高の友人と充実した学園生活を送ったり。 だが、現実でそんな劇的な事は起こらない。義理の妹も、幼馴染も、現役アイドルな同級生(クラスメイト)もミステリアスな先輩も、男の親友キャラですら俺にはいない。ならどうするか……自分で作り上げるしかない! ラブコメに必要なのはデータ分析と反復練習、そして―― 
第14回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。俺は、現実をラブコメ色に染め上げる!


実生活にラブコメを持ち込むため日々努力する少年の物語。
という紹介文の時点ですでに頭がおかしいが、それに違わぬとんでもない主人公が出てきた。こいつはバカだ、間違いない。
脅威のリサーチ能力、執拗なまでに徹底した準備をする情熱と根気。何故この能力を他に生かせなかったのかと思わずにはいられない、努力の天才型の主人公が努力の方向を間違えてしまった悲劇がコミカルに描かれる。しょうもないことを全身全霊でやり切る作品というのは、どうしてこうも面白いのか。
しかも、学校にいる時=作戦実行時よりもパッケージヒロイン上野原ちゃんとマッ〇で作戦会議しているところの方が断然ラブコメっぽいという本末転倒な間抜け具合が、主人公のおバカさ加減を強調する。というか、彼のいうところのメインヒロインが可愛さよりも胡散臭さが勝つので(理由は最後に明かされる)、上野原の可愛さでラブコメとして成り立ってるまである。
設定上どうしても説明が多くなり話のテンポが悪くなってしまうのが難点だが、発想とコンセプトは面白く、それを突き抜けてやり切ってくれているのでとても楽しいラブコメだった。
但し、主人公の例えが実在のラノベの引用ばかりで、彼の話を理解するにはラブコメラノベの知識が相当に必要なことと(ラノベバカのおっさんでも何か分からない作品、タイトルは知っていても読んでいない作品が多々出てきた)、主人公がやっていることが客観的に見ると本気でキモいので、読む人を選ぶ作品なのは間違いない。