いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「はたらく魔王さま!21」和ヶ原聡司(電撃文庫)

魔王城を打ち上げ、エンテ・イスラでの人間同士の争いも治めた魔王たち。残すは天界で神討ちに挑むのみ──だったのだが、その前にやるべきことがあった。魔王と勇者はじめ、一同が正装で向かったのは、千穂の自宅、佐々木家だった。
千穂の父と会い、日本にやってきた当時のケジメをつけた魔王。しかし頂点会議から続く体調不良で、日常生活にも影響が出ていた。決戦を前に、見かねた恵美は魔王を心配するのだが──?
最後まで格好つけられない魔王たちを待ち受ける、天界の真実とは。神討ちは成るのか。成ったとして日本での生活はどうなるのか――フリーター魔王さまと元テレアポ勇者の長い戦いもついに決着、庶民派ファンタジー、感動の完結!


三年後を小出しにしながら、神討ちの経過と結果を語っていくシリーズ最終巻。
取り繕ってもしょうがないのではっきり言おう。固有名詞いっぱいの説明文がチンプンカンプンだった。
元々あちらの事情は日本での日常に比べると関心が薄く、その上1年8ヵ月も間が空いてしまったものだから、状況は何となく覚えていても人や物の名前は綺麗さっぱり忘れていていた。結果、見慣れないカタカナが上滑りしていくだけの文章に。特にウツシハラ登場後とラスボス戦意喪失後の説明パートは何言ってるのかさっぱり。
まあ、いいのです。大事なのは、庶民派魔王と愉快な仲間たちの関係はどうなったのか。日本での生活が続くのか。千穂が笑っているか。この辺りだから。そして、そういう観点では大団円で感無量な内容だった。
本編の経過に合わせて、一人一人の無事とその後が語られていく三年後のエピソードが、初めのうちはまた思わせぶりなことを、と思っていたのだけど、これが思いの外良かった。
前半はサブキャラがメインで、懐かしい気分になったり、相変わらずの様子に苦笑したり、予想外のカップルに驚かされたり。後半は主要メンバーが一人ずつ魔王の下に集合していくのが、実に最終回らしい。鈴乃が面白日本かぶれに戻ってしまったのは、笑えばいいのか嘆けばいいのかw 語られなかった一組はその後進展がなかったんだろうな。彼が基本向こうみたいだから仕方がないか。
そして最後はヒロインたちと魔王との関係。ああ、これが千穂ちゃんが望んだ結末か。本当に勝ち取ってしまったんだな、特別な力を一つも持たないあの子が。このシリーズで間違いなく一番頑張った彼女が報われて、笑顔で終わりを迎えられて本当に良かった。千穂ちゃんに心から「よかったね」と言える、もうそれだけで胸がいっぱいです。