いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「真夜中のペンギン・バー」横田アサヒ(富士見L文庫)

風間佐和は落ち込んでいた。高校時代から仲が良く、片想いしていた青年と、急に連絡がつかなくなったのだ。体調が悪いの? 会いに行こうか。でも迷惑……?
悩む彼女は初めてバーを訪れる。この店のマスターはなんとしゃべるダンディなペンギン!? 佐和は驚きつつも、チョコムースのような甘いカクテルと絶品おつまみに感動。さらにマスターからの特別な一杯とその由来に励まされ――。
佐和と4人の思いが温かく解けるとき、全てが繋がる感動が訪れる。さぁ、小さな奇跡とかわいいペンギンが待つバーにようこそ。


人生に躓いた人が行き着くBAR・PENGUINを舞台にした短編連作。
ヒゲペンギンに蝶ネクタイというベストマッチな出で立ちに、腹滑りやジャンプなどの愛らしい仕草。それでいて声は低くて渋く、振る舞いは熟練のバーのマスターで、人生経験とお酒の知識もバッチリ。そんなパーフェクトなペンギンのマスターが最高。
ただ、その強い個性が生きているかというと微妙なところ。
この物語は短編連作形式で各話の主人公は別々であるが、一話一話の話の流れは固定。まず悩みを聞くのはマスターではなく、近くにいる常連客(動物)。その後、マスターが勧めるカクテルを飲むと夢の世界に飛んで、そこで体験したことに背中を押されて前向きになる。という話の流れ。
かなりファンシーなのもちょっと気になるところだが、それ以上にやけに常連客が出しゃばるのが気になる。
折角マスターがこんなにいいキャラしているのだから、夢や常連客(動物)に頼ることなく、マスターの選ぶカクテルと言葉だけで迷える客を癒してほしかったのだが。
迷っている人・参っている人が前を向き歩き出すきっかけがもらえる物語なので、いい話だとは思うのだけど、余分な要素が多くて話がごちゃごちゃした感じになっているのが残念。