いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「1LDK、そして2JK。 III ~夏が始まる。二人はきっと、少し大人になる。~」福山陽士(富士見ファンタジア文庫)

「私、ぶっちゃけ夏休みの楽しい過ごし方とか知らないんだよね」(奏音)「あ、私もです」(ひまり)――。26才サラリーマンと2JKの奇妙な共同生活は、夏を迎えようとしていた。心に抱えた小さな綻びを、そっと抱きかかえるように過ごす2人。それを見守る駒村は、せめて夏休みに楽しい思い出を作ろうと、3人だけでキャンプに行くことを提案する。「あんなに笑ったのは久しぶりだったな――」。楽しいひとときを過ごせたのも束の間、彼女たちの運命を大きく動かす再会がすぐそこに待ち受けていることに、誰も気がついていなかった――。話題沸騰、“いまいちばん先が気になる”青春ラブコメが夏休み編にと突入!!


一人のサラリーマンと二人の女子高生の同居生活ラブストーリー第三弾。
帰る決断をしたひまり。ついに母からの返信が届いた奏音。終わりと別れを意識しながら迎える三人の夏の物語。
共同生活の終わり。日々の生活の中でも三人がそれを意識していて寂しい気分になるのだけど、強烈に印象付けていったのは三人で行くキャンプ。思い出作りのためという発想からして楽しさよりも寂しさの方が勝ってしまうのに、締めの線香花火の情景と会話が切なくて。本当に終わってしまうんだと嫌でも実感させられる。
もう一つ忘れてはいけないのは夢の話。
夢を追うために家出までしてきたひまりと、夢を諦めた和輝。二人の対比とそれぞれに心を揺さぶる出来事があって、この先に待つ三人の決断に大きな影響を与えそうな予感。
こういった夢の話では顔を出さない奏音の夢はなんだろう。必ず持たなければならないものでもないが。生い立ちから最も家族を求めている彼女にとっては、今の三人の生活が夢の中なのかもしれない。そう考えるとまた切なさが。
そんな胸を締め付けられる想いをしつつ、物語はまた衝撃のラスト×2で次回へ。
ずっと考えていた三人での生活のこと、焚きつけられるように見せられた同僚の恋模様、思いがけず示された夢の続き。いくつも出された宿題に和輝がどんな答えを出すのか、次巻が待ち遠しい。