いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 心をつなぐスープカレー」友井羊(宝島社文庫)

早朝にひっそり営業しているスープ屋「しずく」のシェフ・麻野は、優れた観察眼で客の悩みを見抜き、解決する隠れた名探偵。長期出張中のOLが恋人に別れを切り出した理由は? 無実の罪を着せられ不登校になった少女は、身の潔白を証明できるのか? 人気洋食店の店主が抱える秘密とは? 素晴らしい推理と料理を提供する麻野に、常連客の理恵はあることを告白する。人気シリーズ第6弾!


表紙の露ちゃんはそういう意味だったのか!
思わせぶりなオープニングと、知らない名前の同僚で理恵どこかに出向してることはすぐわかったが、朝に会話はしてるしスープも飲んでるから大きな変化はないものだと思っていたら、、、久々に「やられた」感を味わった。
いつも通りの短編連作だが、今回はある理由で理恵の出番が少なく、周囲の謎や疑惑に悩む客にスープ屋の店主(麻野)が鋭い洞察力と閃きでちょっとした助言をする、シリーズ当初に原点回帰したような話が多かった。その上で、テレワークやリモート会議など、コロナ化での社会や仕事の変化とそこで起きる問題をコロナを出さずに表現した意欲作でもある。
話としてはスープ屋しずくと料理人としての麻野の原点が見える最終話が良かった。直後にサプライズと嬉しいこともあるし。でも、シリーズをここまで重ねてきて、今更理恵と麻野の絡みが少なくなるのは寂しい、というのが本音ではある。
そんないつもと違う日常の中、スープの質と量はいつも通り。
今回の一押しは断トツで鶏団子のすだちスープ。夜読んだので身悶えた。規模を大きくしてお鍋でもいいかもしれない。すだちの量が問題になるけど。
あとはポタージュ系が多かったのが印象的。作中は夏から秋にかけてだったが、どちらかと言えば冬に飲みたい温まりそうなものばかり。中でもなめこのポタージュ。きのこをミキサーにかける発想はなかった。ねばねばのとろとろを熱々で飲みたい。
次は理恵の日常が戻っていますように。