いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「狼と香辛料 XXIII Spring LogVI」支倉凍砂(電撃文庫)

年代記に語り継がれるほどの活躍で、借金に悩むサロニアを救った賢狼ホロと元行商人のロレンス。その御礼の代わりにと、二人に贈られたのは、誰もがうらやむ貴族特権だった。
身に余る報酬に浮かれているロレンスを尻目に、どこかきな臭さを覚えるホロとエルサ……。そして、特権で譲り受ける土地を調べに行くと、そこは大蛇の伝説が残る、いわくつきの土地で!?
さらに、いざ、夏の山へ! ロレンス一家のピクニックを描いた『狼と実りの夏』に加え、新たな友人と旧友の別れを描く書き下ろし短編『狼と夜明けの色』も収録。
賢狼と元行商人の幸せであり続ける物語、第6弾!


1年9ヵ月ぶりの本編後日譚Spring Logの6巻。
5巻で生真面目聖職者エルサと再会したサロニアの町の続き。短編全四話の構成だが、湯屋での過去の幕間『狼と実りの夏』以外はサロニアの町のエピソードで、5巻の続きの長編といったところ。

本領発揮というか、いつも以上というか。ロレンスとホロのイチャラブ、仲睦まじい姿をこれでもかと見せつけてくる巻だった。
何というか、ホロに格好つけたいロレンスと、いい歳して少年のようなロレンスに呆れながらも満更でもないホロの様子を、やれやれと見守るエルサという構図が実にしっくりきていた。
特にエルサがメインの視点で話が進む『狼とかつての猟犬のため息』は、甘さに中てられる読者に近い視点なのもあって、エルサの感想に一々共感してニヤニヤしてしまう。本編後半のコルのように生真面目な第三者が居ると、なにか良いシナジーを生むのかも。
そのエルサも人妻になった心の余裕なのか、少女の時のようとちょっと楽しくなってしまったり、中てられて里心が芽生えたりと、昔とは違うイメージ。本編で出会った若い頃なら不真面目だ不誠実だとキャンキャン吠えてたに違いない。それだけ月日が経ってるってことかな。なにはともあれベタ甘夫婦のお守り、お疲れ様でした。
別れの寂しさと夫の過多な気遣いから出したホロの答えに終わりの気配を感じたけれど、まだ続くようで。そういえばこの旅はミューリに会うのが目的だった。忘れてた。