いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「明日の罪人と無人島の教室」周藤蓮(電撃文庫)

機械による未来測定が義務化された世界。
少年・湯治夕日は、将来的に罪を犯す存在《明日の罪人》と判定され、無人島『鉄窓島』での隔離更生プログラムへの参加を強制される。
集められた12人の《明日の罪人》。その使命はただ一つ。一年間の共同生活を通じて己が将来の潔白を証明すること。
だが、日々を過ごすにつれ少年少女たちに潜む心の闇が徐々に露わになり始め……!?
迫りくる悪意、苦難、孤独――。その果てに捻じ曲がる未来は贖罪か。それとも絶望か。『賭博師は祈らない』の周藤蓮が贈る、衝撃の学園クライムアンサンブル!
――さあ、『特別授業』を始めよう。


現実規定関数によって明日の天気予報は外れず、人の将来もある程度定められる、未来予測ができるようになった世界。その世界で、将来必ず犯罪を起こすと測定され、無人島に集められた12人の高校生たち。彼らは測定された未来を覆すことが出来るのか? という物語。
一般常識から感覚や価値観が大きくズレた若者たちの葛藤や苦しみを描いた青春小説。
誰しもが少なからず抱える問題を分かりやすく肥大化して表した物語には読み応えはあるし、主人公の優れた洞察力で所々推理もののようになっていて、面白くないわけではなかったが……。
率直な感想を端的に表すなら「ややこしやーややこしやー」かな。
前提条件が多すぎるのと、若者が抱える異常性が多岐にわたるので、それぞれの持つ特性や常識を把握しないと、彼らの突飛な行動の意図が読み取れないので、推理は難しく共感はもっと難しい。
そして、これが作者の作風を変えてまで出すものなのかという大きな疑問が。
作者の(電撃文庫での)これまでの作品は、ラノベらしからぬハードボイルドな主人公と艶めかしさを感じるヒロインで、理屈ではない内から滲み出て来るような歪んでいるのに真っ直ぐな愛の形を謳った物語だった。本作はそれらから脱却する為の新境地だったと思うのだけど、、、申し訳ないが過去二作のより良いと思う点が見出せなかった。
別のジャンルにはもっと上手い人が他にいるから、作家さんには得意分野で書き続けてもらいたいと思うのは、作家の可能性の狭める読み手の我儘だろうか。自分の特徴を消して味がなくなってしまったラノベ作家をいっぱい見てきているので、作者がそうならないといいなと切に願っている。ストレートに言うなら『吸血鬼に天国はない』の続きが読みたいです。