いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「我が焔炎にひれ伏せ世界 ep.1 魔王城、燃やしてみた」すめらぎひよこ(角川スニーカー文庫)

(あわよくば何か燃やしたい……)という欲求を抱いていたホムラは異世界へと招かれる。そこには同じようにヘンな女子高生達が集められており、何でも特別な才能を持つ彼女達に「この世界を救って欲しい」という話のようで?
100年振りの魔王復活、混乱に乗じて蔓延る悪党共。天下動乱の世を正す為、世界の命運は少女たちに託された――。
「あなた悪人さんですか? それなら心置きなく燃やせます!」
燃やすことこそ大正義! 焼却処分はエクスタシー!!
圧倒的火力で世界を制圧していく残念系美少女ホムラの行く末は!? 最強爆焔娘の異世界コメディ!!

スニーカー大賞12年ぶり「大賞」受賞作



それぞれ違う世界線の日本から女神によって連れてこられた異能を持つ少女たちが、魔王討伐を目指すハチャメチャ異世界転生コメディ。
変人変態だらけ五人の少女たち。ぶっ飛んだキャラクター造形が個性的でとても良かった。
なので、彼女たちのキャラが刺さる人には面白いんだと思う。……刺さらないとただの出来の悪い異世界転生ものでしかないけれど。
自分が考えた大好きな少女たちで愉快で楽しい過激な旅をさせたい!という情熱だけは十分に伝わってくるのだが、そのやりたいシーンを無造作に書き殴っているだけのような文章で、話の前後の繋がりや流れがほとんど感じられない。情景描写や人物描写もおざなりで、どんな場所でどんな姿の人と相対しているのか想像するのが難しい。コメディだからストーリーはおまけでもいいけど、それ以外の部分で読者を置いてけぼりにするのは不味いでしょ。
多分、世界観や細かい設定をあまり考えずに書いているんだろうな、と。何も整地されていない基礎に、派手な上物を無理やり建てたようなアンバランスさ。下地を作ってから崩すのと、無秩序に好き勝手やるのでは訳が違う。
大風呂敷を広げ、ごちゃごちゃしていて派手にやらかす感じは林トモアキ先生や竜ノ湖太郎先生のスニーカー文庫伝統の系譜で、そこだけはスニーカー大賞の「大賞」に相応しいと思えるが、作品としての出来は詰め込み型の悪い意味で新人賞らしい作品。この完成度で12年ぶりの大賞を出すのはどうだろう。