いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「転生王女と天才令嬢の魔法革命2」鴉ぴえろ(富士見ファンタジア文庫)

天才公爵令嬢・ユフィリアとともに王国を襲う脅威・ドラゴンを撃退したアニスフィア。だが、婚約破棄騒動は終わっていない。そのカギを握る令嬢・レイニの謁見に同席したアニスは彼女が“ヴァンパイア”だという真実に気づく。しかし、それは王宮を揺るがす壮大な陰謀の始まりに過ぎなかった――!
「姉上、どちらが王に相応しいか、ここで決着をつけよう!」
「アルガルド。貴方に―王を名乗る資格など、ない」
全ての原因を作ったアニスの弟・アルガルド。事を起こした弟と、彼と国を想うあまり敵対するしかなかった姉がついに激突する―!王宮百合ファンタジー、第二幕!


この物語の始まり、婚約破棄騒動の真相に迫る第2巻。

2巻で化けた。
多くの才能と前世の記憶を持ちながら王位を継ぐためには必須な魔法を使えない姉。沢山の才能を持っていた姉に憧憬と信愛の念を持っていた平凡ながら堅実な弟。小さなすれ違いから始まった仲違いが、負の連鎖産んで取り返しのつかないところまで行き着いてしまった、本当は手を取り合って助け合えたはずの姉弟の悲劇の物語だった。 
好きだったからこそ憎しみ反転してしまった愛情の深さ。間違っている分かっていても前に進むことはやめない、己の信じた道を進む強さ。後悔も反省も遣る瀬無い想いも全て飲みこんで、激しく感情と感情のぶつけ合う、最悪で最高な姉弟喧嘩。それだけでも泣きそうなのに、そこに父母を含めた家族愛まで絡められたら涙腺崩壊不可避だ。
説明多めで凡庸だった1巻これを書くためだったんだと納得。刊行日を見たら4ヵ月も空いているが、これは1巻2巻を同時発売にするか、一冊を分厚くするかしないと駄目だっただろう。
というわけで2巻は期待以上の感動巨編だったのだけど、本領発揮はまだの模様。あらすじが謳う王宮百合ファンタジーには到達していない。アニスはそれどころじゃなかったし、ユフィが自分の小さな嫉妬心すら指摘されないと気付かないくらいだし。最後の最後にようやくそれっぽさが出てきたかな?くらい。ユフィの羽化が待たれる。