いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「転生王女と天才令嬢の魔法革命3」鴉ぴえろ(富士見ファンタジア文庫)

弟・アルガンドの国を巻き込む陰謀を天才令嬢・ユフィリアと共に打ち破った転生王女・アニスフィア。その結果、彼女に王位継承権が復権することになり多忙な毎日に。疲弊していくアニスフィアをそばで見ていたユフィリアは、彼女のために自分が王になる道を模索するようになって――!?
「私は、どんなに受け入れられなくたってこの国の王女なの!」
「私が王になれれば、貴方の夢を守ることが出来ます!」
婚約破棄から助けてくれたアニスをただ慕っているからこそ、ユフィはアニスの前に立つ。全ては、彼女の“魔法使いになりたい”という結女のため。王宮百合ファンタジー、感動の第三幕。


完全に覚醒した。ユフィが、そしてこの物語が。
取り返しのつかない傷を付けてしまった弟への責任と、心を痛めている両親がこれ以上悲しませないために、自分を殺して王になる道を進み始めたアニス。どん底の暗闇から拾い上げてくれた恩人のアニスの夢に光を見出し、その道を進ませるために自分が王になる道を模索するユフィ。誰かを想うがゆえに噛み合わない二人の想いが激しくぶつかる、熱く心を揺さぶられる話だった。
2巻で大分泣かされたので、あれ以上はないだろうと思っていたら、あっさり超えてきた。
誰も彼もが優しくて、だからこそすれ違ってしまっていて、どこもかしこも切なく遣る瀬無い。特に十全に産んであげられなかった母の悔いと、今度こそ父母の期待の応えようとする娘のすれ違いは泣けてしょうがない。
そんな、それぞれの想いのすれ違いも置かれる状況も負の連鎖でどんどんと悪化していく中で、一人諦めずに最善を目指したユフィの愛と情熱に感動しないわけがない。自発的には何もできない良い子な優等生が、こんなに頑固で熱い人に変わるくらい大事な人になったんだなって。
それともう一つ、
ユフィの覚醒によって、ついに“王宮百合ファンタジー”になった。
何と言うか、必死さとか不器用さとか、二人とも大泣きしながら自分の思いをぶつけ合った後で、感情が昂って至ってしまった感が強くてとにかく尊い。なのでニヤニヤして楽しむ空気ではなかったので、イチャイチャは次からに期待したい。それにしてもユフィがタチでアニスがネコなのが意外だ。かなり意外だ。
第一部完に相応しい盛り上がりと、待ちに待った百合が花開いた傑作と言って差し支えない物語だった。第二部はどんな話が待っているのか楽しみ。