いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「さよならの言い方なんて知らない。8」河野裕(新潮文庫nex)

現実世界の桜木秀次郎からのメッセージは、香屋歩に「切り札」を与えた。架見崎を破滅へと導くウロボロスへの対抗策を。……時を同じくして、平穏な国と世界平和創造部は戦争へと突入する。戦端を開いたのは、月生亘輝と白猫。「最強」と呼ばれる二人が、互いに七十万もの戦力を保持して、激突する。鍵を握る七秒間、ヒトの認知を超えた戦いの行方は? 邂逅と侵略の青春劇、第8弾。


8巻。とても贅沢な巻だった。
数多にあったチームが平穏の国と世界平和創造部の二つになってしまった架見崎で、両チームの最大戦力である月生と白猫。努力の最強と天才の最強によるガチンコ頂上決戦。こんなの盛り上がらないはずがない。しかもそれを、準備と結末を含めてではあるけれど、10秒にも満たない対決を100ページ以上のボリュームを贅沢に使って書かれてしまったら尚更だ。
そもそも現在の架見崎の最強決定戦というだけでも熱いのに、どんな結果になっても確実に架見崎の終焉に近づく事実に、ここ数巻で語られてきた月生の過去と人生観もあって、一文字たりとも目が離せない。
しかし、そんな贅沢な決戦を前座として贅沢に使う畜生が二人。後半のメイン、香屋とユーリィの対ウロボロス作戦が壮絶の一言。
香屋、ユーリィ、ウロボロス。ルールにも常識にも縛られない三人の思惑が絡み合う戦争は、途中から何やっているのか分からなくなってくるけれど、緊張感だけはもの凄い。そしてまたしても顕著になる香屋の異常性。一騎当千の戦闘力を持つユーリィとウロボロスに対して、一般人レベルかむしろそれより弱い香屋が並び立っているのが本当に異常だ。
これは犬猿の仲の古株で重鎮のシモンに英雄認定されるのも納得するしかない。まあ毒虫とも言われてたけど。私個人としてはシリーズ初期から一貫して「香屋は化け物」だと思っているので、人間じゃないという認識では一致している毒虫の方がしっくりくるかな。
結局に何が言いたかったかというと、面白かった。とても。
最高に盛り上がった8巻だった 次はユーリィinヘビというラスボス通り越して裏ボスみたいな存在に、運営が用意した謎の少女AI(16)と、爆弾が二つも投下されるようだ。相変わらず着地地点が全く見えなくて目が離せない。