いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「青を欺く」三船いずれ(MF文庫J)

青を欺く (MF文庫J)

俺、城原千太郎はウソつきだ。空っぽな自分は表に出さず、他人の仮面を被って毎日をやり過ごす。だがそんな高校生活はある日、小悪魔かわいい後輩女子・霧乃雫に打ち砕かれた。
『映画監督』の霧乃は「ウソつきは、役者のはじまりです!」と俺を自主制作映画に引きずり込む。
しかも期待でキラキラした顔で撮りたがるのは、俺が演じる「最高にイケてる役」!?
加えて学級の人気者だが本性はサバサバ系女優の桜に、体育会系のボス・石田もチームに入り撮影はスタート。しかし、とあるトラブルから映画作りは難航してしまう。その裏には霧乃の隠し持った想いが──?
ウソだらけで、間違って。でも、この青春はきっと止まらない。

第19回MF文庫Jライトノベル新人賞《優秀賞》受賞作


YouTube等のネット動画全盛の時代の感覚と感性を持った若者たちが、それでもあくまで“映画”にこだわり情熱を傾ける青春小説。
陰キャで嘘つきな主人公城原(役者)に、やたらと押しの強い後輩霧乃(監督)、美人で自信家のクラスメイト桜(役者)、野球部の主力なのに小説が趣味な石田(脚本)。性格も容姿もヒエラルキーもバラバラな4人が映像制作を通じて一つの目標に向かって進んでいく。
特技も立場もやる気もバラバラなスタートから次第に噛み合いだす歯車。かと思ったら自分の演技・脚本・映像に対する譲れない想いのぶつかり合い。そして直面する不安と挫折。青春小説に必要な要素が順序良く綺麗に表現されていて、話が進むにつれて上がっていく熱量に、強く青春を感じさせてくれる作品だった。
……そう、後半は良かったんだ、後半は。
問題は物語の掴み、特に主人公とヒロインの第一印象があまりも悪すぎた。
自分の利益のために病気の妹をでっちあげ嘘を熱演する主人公に、その主人公を脅迫して自分の映画に引っ張り込んだ上に、テストと称してかなり質の悪いドッキリを仕掛けるヒロイン。こいつらただのクズじゃね?と、この時点で大分読む気が失せた。
主人公はその後に見せる真面目さと正義感の強さや、語られるトラウマで好きになれる要素があったが、ヒロインの方は好感度最低値からさほど上がらず。この子はどう頑張っても人として好きになれそうにない。
初め落としておけば後は上がり目しかないのは分かるけど、ここまで落とす必要はあったのか? Scene3の途中まで不快感と嫌悪感しか感じなかったんだが。
青春小説として尻上がりに面白くなる作品ではあったのだけど、何事も第一印象は大事だと気付かせてくれる作品でもあった。