いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「氷川先生はオタク彼氏がほしい。 1時間目」篠宮夕(富士見ファンタジア文庫)

「可愛くて優しいオタク彼女がほしい」儚い願望を抱くオタク高校生の俺、霧島拓也は春休み――理想の彼女に、出会った。
「そ、その、もう少し君と話せたらなって思ってて……」
オタク美少女、氷川真白さんに! 趣味も相性抜群な俺たちはすぐに仲良くなって、氷川さんの手料理をご馳走になったり、オタクデートを重ね、晴れて恋人になったんだけど……新学期。
「私が皆さんの担任となりました……えっ?」「……はっ?」
彼女の正体は、学校の鬼教師“雪姫”こと氷川先生だった!? ちょ、え……生徒と教師って絶対アウトなやつじゃねぇか!
これは俺と氷川先生の、禁じられた二人の、秘密の恋物語だ。


春休みに付き合い始めたオタクな年上彼女は実は学校の先生で!?な年の差ラブコメ
身も蓋もない言い方をすると、『ぼく勉』の桐須真冬先生をメインヒロインに据えたラブコメ。違いはオタクなことくらい? そういやポンコツやあだ名だけでなく下の名前も似てる。
公私のギャップが激しく、ダメな姿こそ可愛いタイプのヒロインは大好物。
その上、主人公はオタクな恋愛初心者とは思えないほど、気配りが出来て冷静に物事を考えられる少年で、自分が目立つよりも上手く舵取りしてヒロインを引き立てるタイプだったり、先生視点がちゃんとあって、彼女の本心が補強されていたりと、年上ヒロインを可愛く見せる為に全力を注いだ作品だったので満足。イチャラブを堪能した。
この二人の感じだと、主人公の後輩幼馴染みや顔なじみの先生は、恋のライバルというより、この先いっぱいボロを出すだろう二人のサポート役に回りそうかな。入り込む余地はなさそうなので。
今後もバレ危機をすれすれで回避していくドキドキ感と共に、より一層のイチャイチャを期待したい。

「俺、ツインテールになります。18」水沢夢(ガガガ文庫)

ついに集結した四体の神のエレメリアン「終の零星」。ツインテイルズは宣戦布告として彼らからアルティメギル基地への転送ゲートディスクを手渡された。いよいよ最後の戦いの時が迫っていた。総二たちはそれぞれが想いを胸に、来たるべき決戦までの日々を過ごす。そんな中、愛香はある決意をする。一方で、エレメリアンたちにもある覚悟を胸に行動を起こす者がいた……。やがて世界では、火山がツインテール型に噴火するなどカタストロフィーの前兆が巻き起こり始める。今こそアルティメギル基地へ突入せよ、ツインテイルズ!!


最終章前編(前後編になるか前中後編になるかそれ以上になるかは不明)
強くなった最後の幹部との決戦、ツインテイルズたちの準備と決意、敵の本拠地への突入と、そこかしこに最終決戦の気配が漂い、盛り上がると同時に少しの寂しさが混じる。
状況的に日常パートはこれが最後? 愛香とトゥアールのどつき漫才も見納めか。最近はお互いへの思い遣りが感じられて大人しかったので、今回くらいもっと激しくても良かったかも。でも、その気遣いのおかげで「愛香の番」が回ってきたのだけど。肝心のキスシーンよりも、その前のツインテールを結ぶシーンの方がよっぽど甘い空気が出ているのが、この作品らしい。というか愛香以外とはしてたんだっけ? キスシーンという真っ当なラブコメシーンは印象に残らないのも、この作品らしいw
一方バトルの方は、ツインテイルズと首領+終の零星がそれぞれ一対一で戦う敵の本拠地戦は、展開としては熱かったものの、バトル描写は薄目だったので、ここで一度因縁を作って次以降が本番というところだろう。
そんなわけで、このシリーズとしては全体的に大人しい印象の巻だった。最高の盛り上がりがこの先に待っているはずなので、その前の助走かな。
次回、ツインテイルズの逆襲が始まる? まずは、一度挫折したヒーローを立ち直らせるのは誰になるのかが見もの。

「プロペラオペラ」犬村小六(ガガガ文庫)

極東の島国・日之雄。その皇家第一王女イザヤ18歳。彼女は、重雷装飛行駆逐艦「井吹」の艦長である。もちろん乗組員全員彼女の大ファン! そんな「井吹」に突然部下として乗り込んできたのは、主人公クロト。皇族傍系黒之家の息子クロトはイザヤとは幼なじみだったが、ある日、彼女に対し最っ低の事件を起こして皇籍剥奪、敵国ガメリア合衆国へと逃亡したのであった。お前、どの面下げて!? しかしクロトは言い切る、「俺はガメリアを牛耳る怪物から日之雄を守りに帰ってきた!」犬村小六の「恋と空戦のファンタジー」堂々開幕!!


圧倒的な戦力差の大国に、己のプライドをかけて絶望的な戦いに挑む弱小国の若者たちの物語。
犬村作品を知っている人限定の例えで言うと、諸々の設定やキャラ配置からして、恋歌と夜想曲とヴィヴィ・レインのいいとこどりを、太平洋戦争をモチーフにして書かれた作品、という感じ。
『とある飛空士シリーズ』と同じ空をメインに戦う話だが、『とある』が飛空艇乗りがメインで局面では個の戦いだったのに対して、本作は空飛ぶ戦艦で戦う、チームでの戦い/大局的な戦いがメインであることが大きな違い。戦艦が飛ぶ仕組みが独自の設定で色々無茶が出来そうなので、今後どんな戦いが繰り広げられるのか楽しみ。まあ1巻ですでに無茶してる気がするが。
という、外面の説明はこれくらいにして、1巻を読んだ一番の感想は、
キャラクターが濃い。
その才能ゆえに自尊心が肥大化しすぎたヒーロー・クロトと、行き過ぎた責任感と愛国心を持ちなが素の表情はSっ気たっぷりのヒロイン・イザヤ。端的に言うとツンデレコンビ。まるで上手くいきそうな気がしないw
そして敵のボスは欲と執着心の権化、蛇を思わせる変態のカイル。って、またこのタイプか。ゼノンといいジェミニといい、作者このタイプの敵好きすぎるだろ(^^;
脇役たちも極端に走るタイプばかりで、ぶっ飛んだ奴ばかり。
悲壮感漂うストーリーと、コミカルなキャラクター性でバランスが取れている・・・ような気がする。
面白かったが、まだまだ1巻でお楽しみはこれからな印象。
初戦が辛くも相打ちで絶望的な状況がさらに悪化していること、大事なところで「お互いに素直になれない」というつまらない理由ですれ違いそうなこと、作者が幼馴染に厳しいこと(←おい)と、嫌な予感がビンビンしているが、犬村先生なら期待を上回り、予想をいい意味で裏切ってくれると信じている。

「妹さえいればいい。13」平坂読(ガガガ文庫)

冬が終わり、季節は春。主人公達はそれぞれ、新しい一歩を踏み出していた。新シリーズを発表した不破春斗。出版社ブランチヒルに入社し、ついにプロの編集者となった白川京。大学のTRPGサークルでオタサーの姫と化した羽島千尋。そして10万文字のラブレターによって何かを掴んだ伊月は、今度こそ本物の主人公になるべく精力的に小説を書き続けていた。ゲームして旅行して酒を飲み、仕事して、恋をする。同じようで変わりゆく、新しい日常が幕を開けた。大人気青春ラブコメ群像劇、いよいよ最終章――前編!!


完結編前編。京の編集者デビュー。
ほろ苦デビュー、くらいの感じかな。不幸属性の彼女のことだから、ぼろクソに凹まされることも覚悟して読んだので、よくある普通の失敗程度で済んでホッとしている。どんなことでも正直に受け止めて考えすぎてしまう真面目な性格なので、ハラハラはしっぱなしだったけれど。
そんな悩み落ち込む京を救ったのが伊月。
長所を聞かれて答えた言葉も原稿を通したエールも、彼らしく捻くれているけれど、これまでの経験が生きた心に響くものだった。読者もそれを一緒に分かち合ってきているから余計に響くのかも。伊月格好良すぎだろう。やっぱり君が主人公だ。
と、大人たちが青春している間に、コメディで猛威を振るっていたのが千尋
千尋のぶっ壊れっぷりがヤバい。特に「アホ」がヤバい。ボキャブラリーが死滅するくらいヤバい。あの残念なメンバーの中で唯一の良心だったのに、どうしてこんなことに……。
後編は3年後。
彼らがどういう成長をして、どんな関係になっているか楽しみ・・・のような、あの残念メンバーだからちょっと怖いようなw 3歳になった天使栞は純粋に期待。

「ここは書物平坂 黄泉の花咲く本屋さん」新井輝(富士見L文庫)

あの世とこの世の狭間で、鬼の店長が営む奇妙な店「書物平坂」。上司からパワハラを受け人生に絶望した奈美は、この「書物平坂」へ辿り着き、昔大事にしていた一冊に再会。夜通し読書に没頭することで元気を取り戻すと、今度は鬼の店長に店番を頼まれてしまう。
怪しい客ばかりで一筋縄ではいかないものの、奈美は持ち前の楽観的な人柄で乗り切ろうとするが……? (店長のプロポーズにも気づいてあげてほしいけど!?)
さて今日も、鬼のイケメン店長に引きこもりの童子も手伝って、地獄の本屋さん開店です!


上司の理不尽なパワハラに生気を失くしていた主人公・奈美が、迷い込んだ古書店で出会った一冊の本をきっかけに元気を取り戻すだけでなく、その店に住み込みで深夜のバイトまで始めちゃう話。

普通だった……。
楽天家の女主人公、本にまつわる物語、あやかし、女子力系男子、そして新井輝ワールド。好きな要素テンコ盛りじゃないか!とオープニングで大いに盛り上がったのに。
私が新井輝作品を好んで読むのは、丁度いい温さと気だるさ、不安になるような心地いいような地に足がついていないふわふわする感覚、そんな作者の持つ独特の空気感を味わいたいというのが一番の理由。その点本作は、楽天家主人公+あの世とこの世の狭間という設定で、その空気感が増す・・・かと思いきや、逆に薄れた。なぜだろう。主人公の会社の事情がリアルだったからか?
キャラクターは好みだったし、ストーリーは人が元気になっていくいい話。「書物平坂」の店内、奈美・店長・ツヅリの三人が醸し出すほんわか温かい空気は大変心地よかった。ただ、欲しかったのはそれじゃない。
初めに期待値とテンションを上げ過ぎた所為で、ネガティブな感想になってしまった。申し訳ない。