いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「迷宮街クロニクル (4) 青空のもと 道は別れ」林亮介(GA文庫)

迷宮街クロニクル4 青空のもと 道は別れ (GA文庫)
迷宮街クロニクル4 青空のもと 道は別れ (GA文庫)

第一層と第四層を結ぶゴンドラの設置。それにより探索者の利便性は格段に上がる「はず」だった。
だが、設置工事は困難を極める。
頼れる仲間に背を預け、その場を切り抜ければ明日がある探索と異なり、工事では一般人の施工者と現場を長期間護り続けなければならない。一方、迷宮に潜む生物たちも、侵略者の行動を見過ごすことはなかった。
手を携え、総力を挙げて探索者に牙を剥く怪物たち。迎え撃ち、その命を絶つ探索者も、ひとり、またひとりと怪物と同じ運命を辿ってゆく。
別れ。その二文字を直視しながら、探索者は進み続ける。先にあるのは安らかな眠りか、それとも……。
迷宮街が舞台の群像劇、堂々完結。


冒頭いきなり衝撃のシーンで始まるわけだが、その切なさとは裏腹に「ああ、これで真壁は死亡フラグを回避したな」と思った。3巻ではグッドエンドが見えなかったから、寂しいシーンなのにどこかホッとした。


そんな妙な気分で始まった最終巻は、これまで以上に淡々としていて、どこか恐ろしかった。
死は個人じゃなくて数字になったら淡白になるものだと思ってたのだけど、例外がここにあった。この街では死は身近にあるものだけど、今までは一気に亡くなることもなかったし、それぞれ大事に扱われてきた。それが死亡者何名という数字になった途端、3巻で越谷が亡くなった時以上に誰にでも起こりうることを突きつけられた気がして一気に怖さが増した。おかげで緊張感が半端じゃなかった。
そして、真壁の旅立ちのエピローグ。
生きて街を出て行く、ただそれだけのことなのに涙腺が緩む。これまでいくつもの悲しい別れが綴られてきたこのシリーズだからこそ、数少ない明るい別れに素直に感動できた。
ただ、チーム笠置町のメンバーの影が薄いのが少し不満。真壁のチームとあってこの人たちを中心に迷宮街を見ていたので、最後になってその心情を読み取る機会が少ないのが寂しい。特にラストシーンの盛り上がりのためにも翠視点はもっと欲しかった。
死が隣り合わせ群像劇もこれにて閉幕。こんなに緊張感を持って固唾を飲んでじっくりと読んだ本は初めてかもしれない。