いつも月夜に本と酒

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「とある飛空士への誓約5」犬村小六(ガガガ文庫)

とある飛空士への誓約 (5) (ガガガ文庫)
とある飛空士への誓約 5 (ガガガ文庫)

ウラノス王都・プレアデス。王位継承問題が、第一王子デミストリとニナ・ ヴィエントの間で発生している中、ウルシラからニナと仲良くするよう命令 されるミオ。専従騎士であるイグナシオに協力をあおぎ、ニナとの接近をは かる。一方、軍警に囚われてしまった清(きよ)顕(あき)とかぐら。清顕の口封じを密かに 狙うライナ。飛空要塞のバルタザールやセントヴォルトのセシルも、それぞ れ重大な決断をせまられて……。「エリアドールの七人」がその思いをさら に複雑にさせながら、無情にも激動の渦に物語は巻き込まれていく……!


時代の流れに翻弄される若者たちの物語。
クレアとミオの引き裂かれた者同士のぎこちない交友から始まり、秋津人というだけで収監された清顕とかぐらへの拷問、二人を救出したくても実行する手立てがなく焦燥感が募る仲間たち。
重く暗く胃が痛くなるようなシリアス展開が……あれ? そんな空気を吹き飛ばす至高のツンデレ劇場が繰り広げられてるよ!?
その主役はもちろんバルタザール。常に自分に言い訳しながら仲間(主にかぐら)のために奔走する姿は、彼の人間性、隠れた情熱も人の良さも鈍感さも全部出ていて、読みながら百面相せざるを得ない状況に追い込まれる。セシルに対する態度とかなんなの。あんなの笑わずに読めるか! あれだけかぐらのことしか考えてなかったのに気付いてないって、、、ニヤニヤが止まらないじゃないか!
こんな重苦しい情勢の中で、これだけの笑いと嬉し涙を誘われるとは思ってもみなかった。1巻では7人の中では偉そうなだけで一番影の薄いキャラだと思っていたのに、こんなキャラに化けるとは。間違いなくあんたがNo.1だ。
しかも、その前座と幕引きを務めるのが『恋歌』のツンデレ・イグナシオ。
どんなに明るく振る舞っても、どうしても暗い影を落とすクレアとミオの空気を見事に振り払う変わらぬツンデレっぷり。くっ、こんな時にほのぼのさせやがって。最後のポテトは反則だ。
みんながバラバラになる悲しい話だったはずなのに、まさかの新旧ツンデレの競演によって明るい気持ちで読めた。予想通りのしっとりした感動あり、予想外の明るい笑いありで、予想の二倍面白かった。
次は『恋歌』の、あのラストのその後が語られる?