いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか? (2)」新八角(電撃文庫)

夏も盛りの終末都市、東京。ある晩、空を覆った巨大なオーロラが電磁災害を引き起こし、街は暴動、紛争、大混乱。そんな時でも食のオアシス《伽藍堂》は明るく元気に営業中!……と思いきや、自家農園で謎のゲル状生物が大量発生! リコが駆除に奮闘する一方で、ウカはなぜだかほろ酔い気分。二百年前の過去が蘇り、事態は思わぬ方向へ……?
オーロラから始まるドタバタ騒ぎも、仲良し二人にかかれば、ご馳走に大変身。食材はスライムに脱法ミルクに潜水艦!隠し味は、大切なあの日の思い出とひとつまみの幻覚剤!?
遙か彼方の記憶たちと巡り逢う、夏の爽やかな逸品を、どうぞ召し上がれ。


荒廃した24世紀の東京で、食堂を営む女の子二人の終末SF、第2弾。
今回はウカとリコの絆の物語。
昔の二人と似た境遇のヤシギとカンナや、ウカと同じシリーズの《語り手》の手助けをしながら、そこから想起するようにウカとリコの過去が語られるストーリーラインが綺麗。過去語りに入るきっかけが、ヤバい食べ物による幻覚だったりする辺りはこのシリーズらしいが、何でもありのドタバタコメディ感は薄れて、ちょっと切ない系のお話だった。
でもその分、過去の自分たちやヤシギたちとの対比で、仲の良さや信頼の厚さが強調されているので、ニヤニヤ度は高め。クジラに飲まれてもドンと構えているのに、ウカの少々の不在や不調でアタフタするリコちゃんかわいい。ウカちゃんの方は、王だったり嫁取りだったり、この世界に慣れているリコよりもウカの方が主導権を握っている理由が、何となく感じ取れるエピソードが良かった。
そんなわけで、1巻よりも大人しい話だったのだけど、食べ物に関しては相変わらずのハチャメチャっぷり。
スライム飲み干し、巨大シラミを食らい、蟻は調味料で催涙ガスは香辛料。そんななのに、どれも美味しそうに感じる不思議。ゲテモノ趣味はないんだけどなあ。但し、クジラミルクモッツァレラチーズバーガーはガチ。文章と挿絵の両方で襲ってくる、深夜には凶器になる代物。
今回のジャングルのように行動範囲を少し広げるだけで、まだまだ話は広がりそうなんだけど、続きはあるのだろうか。思い出語りが多かったのと、綺麗に終わっているので、ちょっと心配。