いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ひだまりで彼女はたまに笑う。」高橋徹(電撃文庫)

高校生活初日の朝、佐久間伊織は銀髪碧眼の少女と猫が相対している場面に遭遇する。近づく猫に対して困惑気味の少女が発する言葉は――。
「こ、こっちに来ちゃだめにゃー」
思わぬセリフに困惑する伊織に気づき、足早に去る少女。これが涼原楓との出会いであった。
楓と同じ高校、同じクラスとなった伊織だが、楓を見ているうちに、彼女がほとんど感情を表に出さないことに気づく。だが偶然楓の笑顔を目にしたことで、伊織は心動かされ――。
感情の乏しい少女を笑顔にさせる、甘くも焦れったい恋の物語が幕を開ける。


猫と戯れる銀髪美少女が書きたかったですね、わかります。いいですよね。

銀髪碧眼で表情筋が全く動かない美少女を、彼女に一目惚れしたクラスのお調子者な男子が何とか笑わせようと奮闘するラブコメディ。
容姿が人と違うゆえにトラウマを持つ無口な銀髪美少女ヒロインというのはラノベブコメのベタ中のベタだが、主人公がお調子者のクラスのムードメーカーというのは珍しい。こういうキャラは大抵主人公の友人ポディションなのだが。
その主人公が良かった。
どんなに邪険にされてもめげずに、怖がらせないようにウザくならないよう試行錯誤しながら懸命にアプローチする、その一途で健気な姿が可愛いと思えてしまう。
そんな彼だからだろう、ヒロインの保護者役の親友に身内(祖母)という、ラブコメでは普通壁になるヒロインに近い人達が、主人公を応援する珍しい状況に。それが主人公の誠実さを表していると同時に、読者と作中の人物が一緒に二人を見守っているような、微笑ましい空気を作り出していた。
会話のテンポが良くて読みやすく(特にボケ倒しあう主人公と妹の会話が面白い)、惚れた女の子の為に頑張る主人公の健気さが好ましい、爽やかな作品だった。
ヒロインが自分の心境の変化に気付いたところなので、今後ヒロインの可愛さが出てくればもっと面白くなると思う。今回の可愛い成分は大半が猫で一部が主人公だったので。