いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ロクでなし魔術講師と禁忌教典20」羊太郎(富士見ファンタジア文庫)

天の智慧研究会が、フェジテを呑み込む前夜。グレンたちが過去に飛んだ裏で、戦いは最後の局面を迎えていた。
「ボクの領域に並び立つ剣の使い手を……見つけた」「……!」ついに邂逅したリィエルと《剣の姫》エリエーテ。
「どこまで人を弄べば気が済むのだ」「私には勝てません、アベル」過去の因縁を胸に対峙するアルベルトとパウエル。
「この程度で弱音を吐いたら、アイツに笑われるわ!」
そして……フェジテの全てを、一身に託されたイヴ。
誰もが引かず、戦い続ける。決して諦めず奇跡を起こしてきた、あのロクでなしな魔術師の想いを継いで――!


グレンたちが過去で奮戦してた頃、フェジテでは――な第20巻。
過去、グレンに助けられたグレンに感化された人たちが、その思いを胸に絶望的な戦いに挑む展開が熱い……と、初めのうちは思ってたんだが。いくら何でも誰も彼もがグレングレン言い過ぎで、そのくどさに後半はげんなり。そこまでグレン上げしてくれなくても、彼が根はいい奴で正義の魔術師なのは知っているから。
まあ演出的な不満はこれくらいにして、今回のMVPは断トツでイヴ。
天の智慧研究会の大量ゾンビアタックの真意を読み切り、持てる手札と限られた時間で奴らの裏をかいた手腕が鮮やかで惚れ惚れ。いつも思わせぶりで強者ぶってるエレノアの慌てる様子が気持ちいい。
それと、忘れちゃいけないのが短編コメディ要員の教授たちの活躍。
イヴに的確な助言を与えた遺跡馬鹿フォーゼルを皮切りに、あの人もあの人もいつもとのギャップで五割増しで格好良い。ハ先輩がこんなに頼りになるなんて嘘だろ? グレンロボが戦力的な意味で活躍する日が来ようとは夢のようだ。
そして舞台は所謂中ボス戦へ。リィエルが、アルベルトが、イヴがそれぞれの戦いに挑む。
……って、続くのかい! 決着付けてグレンの帰還を待つものだと思っていたが。ラスボス戦は思ったより遠いかもしれない。