いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「さよならの言い方なんて知らない。6」河野裕(新潮文庫nex)

架見崎に現れた新たな絶対者。ウロボロス。「彼」の登場は、戦う意味をすべて変えてしまった。勝者に与えられる報酬「欲しいものをなんでも1つ」を本気で手に入れるため、香屋歩はエデンの実質的リーダー、ユーリイとの共闘を決意する。一方、新たなチームを立ち上げた冬間美咲は、三国が戦争状態に陥る中で、ある目的のために暗躍していた……。
裏切りと奇跡の青春劇、第6弾!


8月1ヵ月を繰り返す架見崎という箱庭。これまでの全てが覆りそうな驚愕の真実が語られ、物語はどこへ向かうのかが注目の6巻。
……だったのだが、予想外に普通でいつも通り。大チーム同士が勢力争いに明け暮れる日々、通常営業の架見崎が繰り広げられていた。まあ、限られた人しか真実を知らないのだから、周りの動きが突然変わるわけがないか。
それでも今回いつもと違っていたのが、戦闘の多さ。
普段はそれぞれの陣営・個人の思惑と下準備に多くの時間を割くが、今回は初めから戦いに次ぐ戦い。そして戦闘が激化すれば、当然退場者も多く出るわけで。
ホミニニさーん!
野心と我が強くて近寄り難いタイプの人物かと思いきや、実は仲間想いで情に厚く、ユーリィの所為で貧乏くじばかり引かされて気の毒で憎めない人。このシリーズの中では上位で好きなキャラクターだったのに、こんなにあっさりと退場させられてしまうとは(涙)
そういえば香屋くん、戦前に誰も死なせないって言ってなかったか? その目標には程遠く、トーマの仕掛けも傍観することしかできなかった今回は珍しく完全敗北といっていい内容だった。それが悪役らしい結末で思いの外しっくり来てたりするんだけど。香屋くん、トーマを筆頭に何人かヒーローだと思われているけど、動きが完全に悪役のそれなんだもの。「いちおう決勝戦なんで」なんて言いながら観戦の為に最終決戦場に顔を出すヒーローが居て堪るか。
あと、気になるのがヘビの存在。
このゲームのおける最強最大のジョーカーなのは分かった。でもトーマ父再現の為のAIじゃなかったの?
1ヵ月で数秒しか動けずやるのは殺戮って、トーマの思い出の中の父親と立ち位置は掛け離れているし、向かう方向も真逆なんだけど。トーマパパ晩年は快楽殺人鬼かなにかだったのか? ホントわからん。
トーマが架見崎を終わらせに掛かるよう様な動きを見せる中、香屋はどう動くのか。次回の逆転劇に期待。