いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ソロキャン!」秋川滝美(朝日文庫)

仕事のストレスが日々溜まっていく千晶。子供の頃から頻繁にキャンプを楽しんできたが、近年はめっきり足が遠のいていた。ストレス解消と癒しを求めて久々にキャンプを始めることにしたが……。絶品料理とひとりの時間を存分に楽しむ、本格ソロキャンプ小説。


社会人になって遠ざかっていたキャンプを再開することになった主人公が、昔のキャンプとの違い、グッズの進化やキャンプ場でのルールやマナーの変化を感じながら、ソロキャンプを楽しむ物語。

ガチじゃねーか!
女性主人公のソロキャンで、他作品で下町の義理と人情の話を書いている作者なので、キャンプ場での一期一会の出会いや、話しかけてくる男性キャンパーとのやり取りなんかがメインの話になるのかと思ったら、ソロもガチならキャンプもガチ。
会話シーンは日々の職場でだけで、キャンプ場では最終話にちょっとした人助けをした時以外はほぼ会話なし。本人の一番の目的が音を楽しみ火を見つめて落ち着く「焚き火」という、コアな趣味の“濃い”主人公が一人を満喫している。
最終話で助ける女子高生は、読者には上司の娘さんだと分かる描写があるのだが、そんなん一人を愛するソロキャンパーには関係ないぜ!とばかりに、ネタバレせずに投げっぱなしで話を終わらせる潔さ。
また、買う前にしっかり吟味して実際の使用感を確かめてと、百均キャンプグッズの使える使えないをはっきり分けてみたり、昔と今のキャンプ事情を比べて、便利な点不便な点を考察してみたりと、キャンプ関係は経験者でないと語れない内容ばかりでこちらも“濃い”。
あと、忘れちゃいけないのが『居酒屋ぼったくり』の作者らしい飯テロ力。
ソロキャンプの醍醐味、自分が好きなものを自分の好きなように食べるを実践しているのでチキンラーメンですら美味しそう。中でも最強なのがアースオーブンのローストビーフ。極上の塊肉を独り占め、何という贅沢。
想像以上に“ソロ”で“キャン”な話だった。面白かった。