いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「義妹生活11」三河ごーすと(MF文庫J)

義妹生活11 (MF文庫J)

義妹であり恋人でもある彼女との、二度目の秋が始まる。
心の余裕を取り戻して沙季との最後の高校生活の思い出を積み上げることと大学受験と向き合うことを両立させると決めた悠太。将来においても自分のやりたいことを優先させるか、それ以外の軸で道を選ぶかを天秤にかけて、ついに自分なりの結論を導くことに……。いっぽう沙季は“ある人物”の影響で恋人としての“もう一歩進んだスキンシップ”に興味を持ち始める。自己分析、やりたいこととやるべきこと、音楽ライブデート、はじめての○○、文化祭。選択と邂逅の秋に“兄妹”が新たな愛情表現を知る触れ合いの恋愛生活小説、第11弾。


受験を控えた秋。文化祭の秋。
スタートは未だ志望校が決まらず、自分の将来のビジョンが見えずに焦る悠太の問題から。
高校生の段階でやりたいことをそんなきっちり決めなくても。というのが一般的な意見になるのだけど、それを言えるのはそこを通り過ぎている大人だから。当事者にその意見を言っても実感がないから、心には響かないだろう。悠太の場合は職業まで具体的に考えすぎている所為で、視野が狭まっているとは思うけど。この真面目さが長所でもあるから、下手に責められない。なんにせよ目指すべき方向性が定まってよかった。
そんなわけで悠太の問題が大方片が付き、紗季にも大きな悩みはなく、平穏な日常へ。そう思った束の間、来日したメリッサによって新たな悩みの種が投下される。それは性の問題。
異性の親に同性の親が傷つけられているのを見て育ってきて、異性の嫌がることを必要以上に怖がってしまう二人。身体の関係を意識するあまり挙動不審になる二人の様子は初々しくて可愛らしいのだけど、それ以上に二人が距離がまた離れるきっかけになりそうなので読んでいて怖かった。
なんて心配しながら読んでいたけれど、思いの外上手く消化した印象。
親の帰宅で有耶無耶になった部分はあるし、当人たちの中ではまだ燻っているのだろうけど、ちゃんと恋人らしい文化祭が過ごせていて、ホッと一安心&ほのかに甘くて微笑ましい。それぞれの視点の独白も結びが前向きで、二人の心の成長/成熟が感じられてとても良かった。
前回二人が決意した周囲へのカミングアウトも、特に波風を立てることなくすんなり受け入れられていて、珍しく心の内も外野も穏やかな状態で次回へ。
……と思っていたのだけど、次回予告からすると紗季の方が早速ぶり返す感じかな?