いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ただいま神様当番」青山美智子 (宝島社文庫)

『赤と青とエスキース』で2年連続本屋大賞にノミネートされた青山美智子氏の最新文庫。ある朝、目を覚ますと手首から腕にかけて「神様当番」と太くて大きな文字が書かれていた! 突如目の前に現れた「神様」を名乗るおじいさんの願いを叶えないと、その文字は消えないようで……。「お当番さん、わしを楽しませて」幸せになる順番を待つのに疲れた印刷所の事務員、理解不能な弟にうんざりしている小学生の女の子、SNSでつながった女子にリア充と思われたい男子高校生、大学生の崩れた日本語に悩まされる外国語教師、部下が気に入らないワンマン社長。奇想天外な神様に振り回されていたはずが、いつのまにか彼らの悩みも解決していて……。青山美智子氏が贈る、笑えて泣けるエンタメ小説です。巻末には、大人気ミニチュア写真家であり、本作のカバーを手がけた田中達也氏との対談も収録しています。2020年7月刊行の単行本『ただいま神様当番』、待望の文庫化です。


落とし物を拾って帰ると、次の日左腕に「神様当番」の太く大きな文字が。そして目の前に現れる神様。神様を満足させなければ当番は終わらない? 腕の文字は呪いか、救いか。神様当番に選ばれてしまった人たちの悲喜交々を描く五つの物語。
利用客の少ない寂れたバス停を使うを使う5人を主人公に、登場人物が少しづつ重なる形で繋がる連作短編。
夢や目標を失い日々に悩んだ人たちが、突然出てきた神様に振り回されながら、自分の振る舞いや凝り固まった考え方、これまでの人生を見つめ直して、前向きになっていく優しいお話たち。特に物の見方を変えたり視野を広げることで良い方に向かう話が多くて、視野狭窄にならないこと、一度立ち止まることの大切さを教えてくれる。
と、ちょっとのきっかけでその人の人生が好転するいい話であるのは間違いないのだが、、、
どうにも神様のやり方が気に入らなくて、もにょもにょする。
その人の欲しいものを目の前に落として拾わせて、その罪悪感につけ込むような形で当番を決めたり、憑いた左腕を勝手に動かして事態をかき回したり。みんな引っ込み思案でやることを自分で決めて動くタイプの主人公ではないので、そうしないと事態が動かないのは分かるのだけど、やり方が強引というかずるいというか。ハッピーエンドの喜びよりも「なんだかなー」という気持ちが先に来てしまう。
作者の作品は四作目だけど、過去三作ほど素直に感動できない自分がいる。