いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「のくたーんたたんたんたんたたん」ムラサキアマリ(MF文庫J)

「父さんを殺した《亡霊》に復讐するためなら、僕は悪の道を進む――!」
それから五年、緋野ユズリハは裏社会で《死神》と恐れられる都市伝説(ころしや)になった。全ては復讐のために。《亡霊》の手掛かりを掴むためならば友を殺し、担任教師を殺し、その日も少女を一人殺した……ハズだった。
「私は魔女です。悪魔と契約し、決して死なぬ身体となりました」
少女は何度殺そうと立ち上がり、ユズリハに殺され続けた結果「惚れてしまったようです」などと口走り――? 都市伝説が織りなす愛と殺しと復讐の夜想曲第1番、開演――!

第18回MF文庫Jライトノベル新人賞《最優秀賞》受賞作


父の死をきっかけに裏社会で殺し屋として生きることになった少年が、不死身な訳アリ金髪美少女を相手に仕事を失敗したことから始まるアウトローな現代風ファンタジー。《死神》と呼ばれる少年の復習譚。
タイトルの掴みは最高。脇役含めてキャラクターの個性も悪くない。しかし、中身は全く噛み合っていない歯車が二つ空回りしている様だった。どうしてこうなった?
理不尽で暗く影を落とす主人公とヒロインのそれぞれの生い立ち。現実よりも犯罪率が高く人の命が安い殺伐とした社会。主人公の目的は父の仇への復讐。どこから切ってもダークでシリアスな世界観。なのに、登場人物たちのやり取りは、冗談や軽口ばかりが飛び交うおちゃらけ重視の素軽いコメディ。読みやすくはあるが、世界観をぶち壊してまでしてやることか?
これがシリアスなシーンになるとスイッチが入れば良かったのだが、どんなシーンでもずっと口調が軽いままなので、台詞が薄っぺらい。おかげで仇敵に会った場面や覚醒前の大ピンチなどの真に迫ったシーンでも、危機感がなければ感動もない。
重い復讐劇なの当の本人たちはふざけているという、何がしたいのかよくわからない話だった。この世界観なら思いっきりシリアスに寄せるべきで、コメディをやりたいならこの重い設定は枷でしかない。ふざけるのはタイトルだけでよかったのに。
久々に出た最優秀賞がこれかー。うーむ。